たこ足配線はなぜ危険?

たこ足配線はなぜ危険?

みなさんのご家庭では、1つのコンセントから、延長コードや三つ又のタップなどの分岐を使ってどれくらいの電化製品を使っていますか?

たこ足配線
たこ足配線

5つも6つも電化製品を1つのコンセントから分岐して差し込んで使っている事は、結構あると思います。電化製品などの使用方法を書いている説明には、「たこ足配線はやめましょう!」と書かれているものがあります。

たこ足配線は電気を使う上で、悪い代名詞のようにも言われています。しかしながら、たこ足配線は1つのコンセントからコードを引っ張ることにより、新たにコンセントの増設工事も必要でなく、手軽で便利なように思えます。ではなぜ、たこ足配線は悪い使用方法となるのでしょうか?

たこ足配線について

実は、たこ足配線はその方法自体が悪いわけではなく、流れる電流の大きさによって安全性が保てなくなる可能性があるから悪いと言われています。1つのコンセント回路に電流がたくさん流れるとブレーカーが落ちます。ブレーカーが落ちるということは、電気の使いすぎだと皆さんは理解していることと思います。

たこ足配線とブレーカー
たこ足配線とブレーカー

では、ブレーカーが落ちるぎりぎりのラインで1つのコンセントから電化製品をたくさん使うとどうなるでしょうか?これが「タコ足配線はやめましょう!」という警告と大きく関係しています。

ブレーカーの落ちるぎりぎりのラインで電気を使い続けると、発熱によって配線が焼けて、ショートや漏電の危険性があります。又、それらの二次災害に感電や火災といった事も十分に起こり得ます。 ブレーカーが落ちないから大丈夫だと安易に思わないようにしましょう。

電気の道すじと負荷

オームの法則とたこ足配線
オームの法則とたこ足配線の図

電化製品をコンセントに差し込み、使用すると電気回路が形成されます。この電気回路はコンセントからコードを経て電化製品の中を通り、再びコードを通ってコンセントに帰って行きます。

このときの電気の流れは途中で途切れずに、また流れやすいような道すじにならなければなりません。この道すじになるのがコードで、電化製品は負荷と呼ばれる抵抗になります。

オームの法則とたこ足配線

電気の基礎で習うことにオームの法則という考えがあります。電気が流れる為には、電流・電圧・抵抗が必要であり、電気回路に流れる電流( $I$〔A〕)は電圧( $V$〔V〕)に比例し、抵抗($R$〔Ω〕)に反比例するというものです。

オームの法則を式で書くと

$I=\displaystyle\frac{V}{R}$

となります。電化製品をコンセントにつないだ場合の電流・電圧はコンセントからの電源で、抵抗は電化製品となります。そして、オームの法則では、抵抗を直列につないだ時と並列につないだ時とでは合計電流の計算の仕方に違いがあります。なお、抵抗1つ1つに注目すると、オームの法則は常に成り立ちます。

直列接続では、図のようになり電流は回路内では一定で電圧は電化製品Aと電化製品Bで分け合う形になります。このように電圧を分け合う事を電圧降下といいます。

並列接続の場合は、電化製品Aと電化製品Bの両端にかかる電圧は共通となり合計電流は電化製品Aと電化製品Bに流れる電流の和となります。

オームの法則とたこ足配線の説明図
オームの法則とたこ足配線の説明図

では、たこ足配線をした場合の電気回路はどのようになるでしょうか?その答えは、たこ足配線をすると、電化製品は、並列接続された形になります。

たこ足配線した場合の電流値

もう一つ、電気回路で重要なことに、電力量( $P$ )といったものがあります。電化製品には「消費電力」と記載されており、単位は「W」(ワット)です。この電力量( $P$〔W〕)とは、電流( $I$〔A〕)と電圧($V$〔V〕)の積で表すことができます。

電力量( $P$ )と電流( $I$ )、電圧($V$ )の関係を式で書くと、

$P=VI$

となります。例として、家庭用のコンセントに消費電力が $800$〔W〕の電気ストーブをつけると、配線に流れる電流 $I$ 〔A〕は、

$P=VI$
$800$〔W〕$=100$〔V〕$×I$〔A〕
$I=8$ 〔A〕

$8$アンペアの電流が流れることになります。では、 $800$〔W〕の電気ストーブ、 $200$〔W〕のテレビ、 $700$〔W〕の掃除機、 $300$〔W〕の冷蔵庫をたこ足配線でつなぎ、それらを同時に使用した場合のコンセントに流れる電流値は何アンペアになるでしょうか?

オームの法則から見た、たこ足配線でも触れた通り、各電化製品の合計電流がコンセントに流れます。したがって、$20$〔A〕の電流がコンセントに流れます。

ちなみに $200$〔W〕のテレビ、 $700$〔W〕の掃除機、 $300$〔W〕の冷蔵庫に流れる電流は

  • テレビ
    $200$〔W〕$=100$〔V〕$×I$〔A〕
    $I=2$ 〔A〕
  • 掃除機
    $700$〔W〕$=100$〔V〕$×I$〔A〕
    $I=7$ 〔A〕
  • 冷蔵庫
    $300$〔W〕$=100$〔V〕$×I$〔A〕
    $I=3$ 〔A〕

となります。

許容電流値について

許容電流
許容電流

コンセントや配線には許容電流値といって、これ以下の電流で使いなさいという電流値が設定されています。この電流値がたこ足配線を許さない考えになっています。一般的に許容電流値は配線なら太ければ、太いほど、コンセントなら形状が大きければ大きいほど、許容電流値は大きくなります。家庭用で使われる延長コードや、コンセントの差し込みは $15$ アンペアが許容電流値となります。この許容電流値を超えて使用すると、電流が流れることによって発生する熱に耐えきれなくなります。

この熱が発生するメカニズムとして、抵抗値が起因しています。この場合の抵抗値とは、配線や差し込みに含まれる抵抗のことです。配線やコンセントに発生する熱は、少ないながらも銅の中に含まれる抵抗が原因で発生します。

一般的に、配線は太ければ太いほど抵抗値が小さくなります。この銅に含まれる抵抗に電流が流れれば熱が発生します。この熱は、電流が高ければ高いほど、また抵抗値が高ければ高いほど、より多く発生します。また、銅の特性で温度が上がれば上がるほど抵抗値が増える傾向にあります。

よって、細い線に大きな電流を流せば熱が発生し、その熱を持ったことによりさらに熱を発生させることになり配線にとっては悪循環の繰り返しになります。そして、配線やコンセントはビニールやプラスチックで出来ています。皆さんの経験でも分かる通りに熱には弱い材質であることは言うまでもありません。

コンセントのたこ足配線と家庭の電気設備

たこ足配線と家庭の電気設備
たこ足配線と家庭の電気設備

一般的な家庭のコンセントは、一か所に差し込み口が2つ付いています。これは電化製品を2つ使用できるようになっています。しかし、たくさんの電化製品を使おうとすると、コンセントの数が足りないので、三又タップやテーブルタップなどを使って、たこ足配線をして電化製品を接続します。

コンセントは分電盤から配線を引っ張ってきて、電気を供給していますが、分電盤のブレーカーは、電気の回路ごとに $20$〔A〕のブレーカーが設置されています。ブレーカーの役割は、その回路に $20$〔A〕を超える電流が流れると、回路を遮断して安全を守ります。

ブレーカーごとの回路は、一つのブレーカーで照明やコンセントなどいくつかの設備が接続されています。例えば、一つのブレーカーにキッチンとダイニングの照明器具、キッチンのコンセント2つにダイニングのコンセント1つが繋がっているとすると、ブレーカーには照明器具とコンセント3つの負荷がかかることになります。

ブレーカーは、負荷のトータル電流値 $20$〔A〕を安全な容量として守っているのですが、例えば極端な使い方として、キッチンのコンセントに、たこ足配線をしてしまうと許容電流以上の電流が流れて、電線や器具が発熱し、火災が発生する危険があります。

つまり、たこ足配線とは、「許容電流以上の電流が流れるような機器の接続のしかた」ということができます。電気を安全に使用する上で大事なのは、たこ足配線の配線数ではなく、「許容電流」を超えないように使用するということです。

一般には、コンセント1つにつき、可能なたこ足配線の容量は、 $15$〔A〕($1500$〔W〕)ですので、この値を超過しないようにすることが大切です。大きな事故にならないように、コンセントの利用は電流値を考えて上手に工夫しましょう。

たこ足配線の例
たこ足配線の例
電気の基礎知識
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